2022年のメタバースを振り返る

2021年にFacebookがMetaに社名変更して、一気に知名度と期待感が上がった「メタバース」。以前は、VR/ARと呼ばれたり、xRと呼ばれたりしていたものだ。

単に「デジタル空間の中に没入する」、というだけであればこれまでもオンラインゲームなどを楽しんでいる人は多かった。しかし、ここにきて「メタバース」が話題になったのには理由があると分析している。

それは、「利用シーンの明確化」、「デバイスの発展」、「暗号資産やNFTの一般化」、という視点で語るとわかりやすい。

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利用シーンの明確化

これまで、ゲーム以外の仮想空間はどこか野暮ったく、垢抜けない印象のものが多かった。しかし、ゲームで使われるunreal engineと呼ばれるプラットフォームを使うことで、現実世界をかなりの再現性をもって表現することができるようになってきた。


[unreal engineを活用した映画Matrix、リアルすぎて鳥肌がたった]

unreal engineほどでなくても、手軽に仮想空間を構築できるプラットフォームも国内外で多数登場してきている。これらも2023年以降生き残りをかけた競争が起き、いくつかのメジャーなプラットフォームに修練すると考えられている。

メタバースブームから企業が多数参戦、「お試し利用」が増える

また、国内でも国土交通省が進める、「Project Plateau」のような、プロジェクトが起きていて、現実世界のデジタルツインを仮想空間上に再現し、我々の生活を未来予想するような取り組みが始まったことも大きい。

こういったメタバースプラットフォームが多数登場、話題が広がる中、2022年は企業も参入し、仮想空間上にショップを持ったり、大手化粧品会社がアバターの化粧をおこなったり、各種イベントやライブが仮想空間内で行われたりした。

つまり、「お金になり始めている」のだ。

この恩恵を初めに受け取っているのは、プラットフォームを提供するスタートアップ企業などだが、さまざまな企業の「メタバース」を構築、収益を得ている。

しかし、メタバース内のキャンペーンやECなど、実ビジネスとしての効果の程は正直不明瞭だ。なぜなら、多くの取り組みが取り組みのスタートは報じるものの、「100万人が来場した」とか、「そういえばよく聞くサービスだ」と感じるものがほとんどないことからもわかる。

また、仮想空間のクリエーターも偏りを感じる。企業からすれば実績を買っているのだろうが、同じ人がプロデュースするメタバースが多いということは、まだまだ規模的成長はできていないとも言えるだろう。

さまざまな企業がトライアンドエラーを始めた状態なので、2023年は「効果がないから取り組みを止める」となるのか、「企業間で提携して複数企業で盛り上げる」のか、「様子見をする」のか、と言った選択を迫られる年となりそうだ。

市民権を得るVTuber、アイドル産業とも交差

一方、エンタメ業界としては、VTuberも多数登場し仮想空間を楽しむ流れが発展的に成長していく年だった。コロナ禍でYouTubeを楽しむ生活者が増えたことも後押しになっていると思われるが、「推し活」をする人もいて、アイドルビジネスのような様相を呈している。

保守・点検、教育にxRを活用、習熟期間の短縮による人不足に貢献

産業分野では、AR技術を使った保守点検ができるようになり、これまでのわかりづらいマニュアルによる操作手順の習得もある程度簡略化される流れにある。

技能習得にxR技術を使うこともでてきていて、教育の分野における期待も大きい。これまでの紙のマニュアルや教育素材から脱却して、動画や3次元空間での経験ができる研修サービスは今後需要も大きいと思われる。

すでに始まっている少子高齢化の流れの中、技術継承が大きなテーマとなってきた産業界だが、xRの技術は確実にその流れを受けて活用されるものとなるだろう。

正直ここまで利用シーンが多岐にわたるのか、と思うほどの状況がこの1年で生まれたと言える。

デバイスの発展

VRというと、ヘッドセットを装着しなければならないことが以前から問題とされてきた。

特に高解像ゲームなどや、高性能PCを前提としたメタバースを楽しむ場合は、高性能PCと接続することが必要で、「入出力インタフェース」として利用する流れがあった。

1500万台以上の販売数があると予測されている、Oclus(Meta) Quest2が2020年に発売され、ヘッドセット単体でのコンテンツを楽しむ流れがでてきた。

当然のことだが、デバイスが普及しないと、コンテンツを作る気にはならないので、Quest2の販売数の伸びが業界全体のコンテンツの充実を後押ししたのはいうまでもない。

しかし、「没入」ということだけを考えると、ヘッドセットとコントローラーだけでは物足りないと思う人を中心にソニーが出したmocopiは衝撃を受けた。

ソニー、小型・軽量な装備で全身の動きを捉えるモバイルモーションキャプチャー「mocopi」を発売
ソニーの小型・軽量な装置、mocopiがあれば、体の動きも仮想世界で体現することができる。

この手のデバイスとしては、HTC VIVE Trackerが使われてきたが、市場での流通量が多い、Meta Quest2では使えないということがあり、利用者はHTC VIVEを前提とすることを余儀なくされていた。

しかし、年明けに我々の手元に届くとされているmocopiは、スマートフォンとも連携できるとあって、手軽にカラダの動きを仮想空間上で再現することができる。

こうなると、これまでも音楽アーティストなどの演出でもみられる、仮想空間とアーティストの動きを連携させるような演出も、もっと手軽に行うことができるようになるだろう。

カラダの動きに関しては、mocopiが興味深いが、2022年は、ブレインコンピュータインタフェースに関しても動きがあった年だ。

脳波で仮想空間を自由に動く、ブレインコンピュータインタフェース

イーロンマスクらが出資している、Neuralinkは、脳内で考えただけで機械操作可能なBMI(Brain Machine Interface)の開発を目指すと発表。2020年には脳内に埋め込むデバイスを発表している。

Nuralink
このチップを埋め込む (出典:Nuralink)

実はブレインテックと呼ばれるこの領域、世界中でも研究が進んでいて、昨今論文の数もかなり増えてきている。

例えば、ロレアルは、ブレインテック企業のEmotive社と共同で消費者が香水の香りを嗅いだ時の脳波を測定し、消費者の好みの香水を提供するサービスを発表している。

また、Synhcronは、2021年にALS患者の脳内血管に、Synchron社のステント型デバイスを埋め込み、ツイートを投稿したと発表している。


[このツイートが、ALS患者に埋め込んだデバイスで、投稿したツイートだ]

こういった分野は、なにもメタバース向けに研究されているわけではない。

たとえば、脳に障害のある人の運動機能を補助するのに活用したり、商品に対する脳の動きを可視化してマーケティングにつなげたり、脳波でさまざまなサービスを操作するといった、実社会の課題解決での利用がイメージされている。

こう言ったテクノロジーが進化し、成熟してくると、メタバースは次のフェーズに移行すると思われる。

暗号資産やNTFの一般化

2022年は、暗号資産が暴落したり、NTFで人財産稼いだりと、ブロックチェーンを基礎とするテクノロジー領域の話題にことかかなかった。

web3については、別の記事で書くとして、この流れはメタバースにも大きな影響を与える。

なぜなら、メタバースにおける経済活動には、デジタルでやり取りできる「お金」と、仮想空間上での「所有の確約」が必要だからだ。

なにも、仮想世界に入ってまで、現実世界の経済活動を延長しなくても良いとも思えるが、貨幣経済では、そこに金銭的価値があることが重要なのだから仕方がない。

暗号資産やNFTに金銭的価値がないと思われていた数年前と違い、それらを所有するメリットを多くの人が感じ始めている。

こうなると、メタバースには経済が紐付き、何らかの活動をする人が自然に増えてくるはずだ。

まだ始まったばかりのメタバースにおける経済活動だが、2023年はどこかのメタバースで大きな経済圏が生まれる可能性すらある。

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