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  • 東洋建設、生成AIで現場映像を柔軟に解析する監視システムを開発

    東洋建設、生成AIで現場映像を柔軟に解析する監視システムを開発

    建設業界において、現場の安全性確保と監視業務の省人化は喫緊の課題となっている。

    従来のAI監視システムは、特定の危険行動や物体を検知するために大量の教師データを用いた事前学習が必要であり、日々状況が変化する建設現場のあらゆるリスクに対応するには、柔軟性と導入コストの面でハードルがあった。

    こうした中、東洋建設株式会社は2026年2月10日、生成AIを活用して現場のカメラ映像をリアルタイムに分析する「生成AI映像分析システム(VLモニター)」を開発したと発表した。

    同システムは、画像と言語情報を統合的に処理できる生成AI技術「Vision-Language Model(VLM)」を採用している点が特徴だ。

    仕組みとしては、現場に設置されたカメラ映像から画像を切り出し、事前に設定した「指示文(プロンプト)」とともにクラウド上の生成AIへ送信する。

    生成AIは、画像の内容とプロンプトの指示を照らし合わせ、現在の状況を分析し、その結果を説明文や音声で現場に通知する。

    東洋建設、生成AIで現場映像を柔軟に解析する監視システムを開発
    「生成AI映像分析システム」の構成イメージ図

    また、画面上で「警戒エリア」を設定し、そこにプロンプトで指定した人物や重機などが侵入した際に、即座に警告を発するといった運用も可能だ。

    同社はこれまでも機械学習を用いた監視システムを構築してきたが、検出対象をあらかじめAIに学習させる必要があり、学習していない対象や状況の変化には対応できなかった。

    今回開発されたシステムでは、生成AIが持つ汎用的な認識能力を活用するため、追加の学習プロセスが不要となる。

    現場職員は、作業内容や工程の変化に合わせてプロンプト(指示文)を書き換えることで、監視対象や検知ルールを柔軟かつ即座に変更することができる。

    東洋建設は今後、生成AIのコード生成能力を活用し、映像分析の結果を作業機械や計測機器と連携させるシステムの開発を進めるとしている。

  • NTTデータCCS、社内システムと連携し業務を実行する生成AIエージェント基盤「つなぎAI」を販売開始

    NTTデータCCS、社内システムと連携し業務を実行する生成AIエージェント基盤「つなぎAI」を販売開始

    株式会社NTTデータCCSは、日本電子計算株式会社および株式会社NTTデータが提供する生成AIエージェント基盤「つなぎAI(Tsunagi AI)」の販売を開始した。

    「つなぎAI」は、その名の通り、生成AIと社内の業務システムや外部SaaSアプリケーションを連携させることを主眼に置いたプラットフォームだ。

    従来の生成AI活用では、情報の検索や要約といった「参照」が主であったが、同基盤を活用することで、申請業務やデータの集計といった「実行」までをAIエージェントに任せることが可能となる。

    例えば、社内規定に関する問い合わせ対応を自動化するだけでなく、必要な申請フォームの提示や、既存システムへのデータ入力といった定型業務も自動化する。

    開発においては、ノーコード・ローコードで独自のAIチャットボットや業務エージェントを作成することができる。

    セキュリティ面に関しては、認証機能や権限管理(アクセス制御)を標準搭載しており、部署や役職に応じて参照できるデータ範囲をコントロール可能だ。

    さらに今後は、NTTデータグループが提供するRPAツール「WinActor」や、AI-OCR「DX Suite」との連携機能も実装される予定だ。

  • アジアクエスト、監視カメラ映像から予知保全の「判断」までを担うAIエージェントを提供開始

    アジアクエスト、監視カメラ映像から予知保全の「判断」までを担うAIエージェントを提供開始

    製造業などの現場において、設備の安定稼働を維持する保全業務は、熟練者の経験や勘に依存する部分が大きく、人材不足と技術継承が課題となっている。

    また、常時監視による異常検知は人的リソースの限界があり、見逃しによる突発的な設備停止(ダウンタイム)のリスクを抱えている。

    こうした中、アジアクエスト株式会社は、同社のAIエージェントシリーズ第7弾として、工場設備の予知保全を支援する「AQ-AIエージェント Facility-Ops」の提供を開始した。

    同サービスは、機械学習(ML)と生成AI(GenAI)という異なる特性を持つAIを組み合わせた「マルチAIエージェント」構成を採用している。

    アジアクエスト、監視カメラ映像から予知保全の「判断」までを担うAIエージェントを提供開始
    「AQ-AIエージェント Facility-Ops」の概要図

    まず、機械学習モデルが既存の監視カメラ映像を解析し、設備の動作異常や保護具の未着用、危険エリアへの侵入といった「状態変化」をリアルタイムに検知する。

    次に、その情報を生成AIエージェントが受け取り、過去の事例や運用ルールに基づいて「それがどれほど深刻か」「緊急対応が必要か」といった意味付けと優先度判定を行う。

    つまり、AIが一次判断までを担うことで、保全担当者の負荷を軽減するというものだ。

    例えば、軽微な変化であれば担当者への通知に留め、異常の兆候が見られる場合には点検を促すなど、状況に応じた最適な対応を判断する。

    そして、これらの判断結果はダッシュボードに集約され、必要に応じてアラートとして通知されるため、異常を兆候段階で捉え、設備のダウンタイムや事故を未然に防ぐことが可能になる。

    具体的な活用シーンとしては、場環境(5S)の定点監視や、危険エリア侵入検知、保護具着用の確認が挙げられている。

    例えば、通路への荷物放置などを検知し、AIが是正指示を含む日報案を自動作成したり、ロボット稼働域などへの侵入を検知し、即座に警告を行うとともに証跡を記録したりといったことだ。

    アジアクエスト、監視カメラ映像から予知保全の「判断」までを担うAIエージェントを提供開始
    危険エリア侵入の即時検知と多言語警告の例

    導入にあたっては、新規に特殊なセンサを設置する必要がなく、既設の監視カメラを活用することが可能とのことだ。

  • Okta、シャドーAIエージェントを検知・管理する新機能「Agent Discovery」を発表

    Okta、シャドーAIエージェントを検知・管理する新機能「Agent Discovery」を発表

    アイデンティティ管理サービスを提供するOkta Japan株式会社は、組織内の「シャドーAIエージェント」を検出し、リスクを可視化する新機能「Agent Discovery」を発表した。

    「Agent Discovery」は、同社のAIセキュリティソリューション「Okta for AI Agents」の一部として提供されるリスク可視化機能だ。

    アクセス権限の認可を行うための仕組みである「OAuth(オー・オース)」の同意プロセスを監視し、非公認のプラットフォームや未検証のエージェントビルダー上で作成されたAIエージェントを特定する。

    シャドーAIエージェントの接続を発生源の時点で表面化させることで、それらがバックエンドのAPI連携や複雑なアプリ間接続に発展する前に把握することができる。

    また、Google Chromeなどのブラウザと連携することで、リアルタイムの信号をキャプチャし、「どのAIツール(クライアントアプリ)」が「どの社内データ(リソースアプリ)」にアクセスしようとしているかの関係性をマッピングする。

    そして、IT部門が把握していない未知のエージェントが重要なデータへのアクセス権限を取得しようとした際、即座にアラートを発信。そこから、エージェントに付与された特定の権限やスコープを明らかにし、セキュリティ審査を回避している未承認アプリを特定する。

    なお、同機能の目的は、単にシャドーAIを排除することだけではない。発見された未承認エージェントに対し、社内の「人間の責任者」を割り当て、適切なセキュリティポリシーを適用することで、リスクのある「野良エージェント」を「管理された正規の資産」へと転換することにある。

    これにより、企業が従業員によるイノベーションを阻害することなく、アイデンティティ管理(ID管理)の統制下で安全にAI活用を推進できる体制構築を支援する。

    Oktaは今後、同機能を拡張し、管理されたAIプラットフォームや大規模言語モデル(LLM)上のリスク検知にも対応させるとしている。

  • NTT-AT、RPAツール管理製品「WMC」にAIエージェントとRPAを連携させるMCPサーバ機能を追加

    NTT-AT、RPAツール管理製品「WMC」にAIエージェントとRPAを連携させるMCPサーバ機能を追加

    RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、事前に決められたルール通りに動くことが得意で、定型業務の自動化に大きく貢献してきた。

    しかし、状況に応じた判断や、非構造化データの処理といった「非定型業務」への対応は困難であり、人間が介在する必要があった。

    こうした中、NTTアドバンステクノロジ株式会社(以下、NTT-AT)は、RPAツール「WinActor」のクラウド管理製品「WinActor Manager on Cloud」(以下、WMC)の新バージョンVer.4.0を、2026年2月16日より提供開始すると発表した。

    「WMC」は、複数のWinActorをクラウドで集中管理するSaaS運用ツールだ。サーバ構築が不要で、シナリオの配布・実行・結果確認までを一元化する。

    今回のアップデートでは、AIアプリケーションが外部ツールを利用するための標準プロトコル「MCP(Model Context Protocol)」のサーバ機能が追加された。

    これにより、自然言語で指示を受け取る「AIエージェント」と、定型作業を確実に実行する「WinActor」をシームレスに連携させることが可能となる。

    具体的には、AIエージェントが「頭脳」としてデータの分析や情報の要約、状況判断を行い、その結果に基づいて「手足」であるWinActorに対し、具体的な作業指示(シナリオ実行)を出すという自律的なワークフローが構築できる。

    例えば、「市場データを分析して報告書を作成する」という業務の場合、AIエージェントが必要なデータの収集・分析・要点の整理を行い、WinActorがその結果を規定のフォーマットに入力し、システムへ登録・送信するといった一連の流れを無人化できる。

    NTT-AT、RPAツール管理製品「WMC」にAIエージェントとRPAを連携させるMCPサーバ機能を追加
    WMC Ver.4.0の概要図

    企業にとっては、高度な自動化を実現するために大規模なシステム改修が不要である点がメリットだ。

    つまり、WMC Ver.4.0を介することで、AIエージェントは既存のWinActorシナリオを呼び出すことができるため、企業はこれまでに作成・蓄積してきたRPAの資産をそのまま活用できるということだ。

  • 物語コーポレーション、「焼肉きんぐ」の電話予約をAI Shiftの生成AIで自動化し月間15万件の対応を無人化

    物語コーポレーション、「焼肉きんぐ」の電話予約をAI Shiftの生成AIで自動化し月間15万件の対応を無人化

    飲食業界において、慢性的な人手不足が続く中、店舗スタッフの業務負荷軽減と顧客満足度の向上が喫緊の課題となっている。

    特に人気店では、ピークタイムに予約や問い合わせの電話が殺到し、対応しきれずに予約の機会損失を招くケースや、配膳・接客といった本来の業務が中断されるといった問題が常態化している。

    こうした中、「焼肉きんぐ」などを運営する株式会社物語コーポレーションは、全店舗の電話対応業務を変革するため、株式会社AI Shiftが提供するAIエージェント「AI Worker VoiceAgent」を導入したと発表した。

    今回導入されたシステムは、従来のプッシュボタン式(IVR)とは異なり、生成AIを活用することで顧客と自然な会話を行うことができるボイスボットだ。

    焼肉きんぐ特有の予約ルールである「当日の順番待ち受付」と「翌日以降の日時指定予約」の双方に対応しており、顧客の要望をAIが聞き分け、予約システム「EPARK」と連携して自動で処理を完了させる。

    また、予約内容の確認・キャンセルは、各種問い合わせにも対応している。

    今回同システムの導入により、全国230店舗において月間約15万件にのぼる電話対応の自動化を実現した。

    これにより、店舗スタッフは電話対応のためにバックヤードへ走る必要がなくなり、目の前の顧客への接客や調理といった付加価値の高い業務に集中できるようになった。

    また、電話がつながらないことによる予約の取りこぼしを防ぎ、顧客利便性の向上にも寄与しているとのことだ。

    さらに同社は、今回の電話自動化に加え、すでに導入している配膳ロボットやセルフレジといった施策を組み合わせることで、店頭受付にスタッフを常駐させずに運営できる体制の構築を進めているのだという。

    今後は、蓄積された問い合わせデータを分析し、回答内容をAIが自動生成するなど、機能の拡張を予定している。物語コーポレーションは、AIエージェントを単なる自動応答ツールではなく、店舗運営を支える「AIワーカー」として位置づけ、持続可能な店舗運営と顧客体験の向上を推進していく方針だ。

  • ストックマーク、製造業向けAIエージェントが開発者の思考過程をロジックツリーにしてPowerPointで出力可能に

    ストックマーク、製造業向けAIエージェントが開発者の思考過程をロジックツリーにしてPowerPointで出力可能に

    製造業の研究開発(R&D)部門において、技術課題の解決策を検討する際、網羅的な調査とその根拠を示すことが求められる。

    そこで、ストックマーク株式会社は、同社が提供する製造業向けAIエージェント「Aconnect(エーコネクト)」に、AIとの対話で構築されたロジックツリーをPowerPoint形式で出力する新機能を追加したと発表した。

    「Aconnect」は、論文や特許、ニュースなどの膨大な技術情報から、AIがユーザの代わりに必要な情報を探索するエージェントだ。

    今回の新機能は、同システムの「技術探索エージェント」が生成した解決策のアイデアやロジックツリーを対象としている。

    AIが導き出した「課題の分解」→「解決アプローチ」→「具体的な技術」という思考のツリー構造を、そのままPowerPointのスライド構成として出力できる。

    これにより、ユーザは「考える作業」と「資料を作る作業」のギャップに悩まされることなく、調査結果を即座に社内共有可能な形式へ変換できる。

    また、最終的な結論だけでなく、そこに至るまでの検討プロセスや分岐が可視化されるため、会議の目的が単なる情報の共有から、検討漏れの確認や採用理由の合意といった「意思決定」へとシフトが期待される。

    さらに、作成されたロジックツリーがそのまま資料として残るため、個人の頭の中に留まりがちな検討の履歴が、構造化されたデータ(形式知)として組織に蓄積されるという利点もあるとのことだ。

  • アテニア、直営店の接客技術を学習したZEALSの音声対話型AI「アテニア AIビューティアドバイザー」を導入

    アテニア、直営店の接客技術を学習したZEALSの音声対話型AI「アテニア AIビューティアドバイザー」を導入

    化粧品販売において、ECサイトは重要なチャネルとなっているが、顧客の個別の肌悩みや生活背景に合わせたきめ細かな提案(パーソナライズ)においては、対面接客を行う実店舗に及ばないという課題があった。

    また、カタログなどのアナログ媒体を用いたコミュニケーションは、制作・物流コストの高騰に直面しており、デジタル技術を活用した効率化と顧客体験の向上が求められている。

    こうした中、ファンケルグループの株式会社アテニアは、株式会社ZEALSが開発したAIエージェント技術を活用し、自社ECサイト上に「アテニア AIビューティアドバイザー」を2026年2月10日より導入すると発表した。

    「アテニア AIビューティアドバイザー」は、店舗の接客マニュアルを学習させたAIが、テキストチャットに加え、音声入力により接客を行うシステムだ。

    アテニアの直営店舗に所属する美容部員の「接客ノウハウ」や「美容知見」を学習させており、これにより、単に商品スペックを回答するだけでなく、顧客の曖昧な悩みや要望に対しても、文脈を理解した上で最適なケア方法や商品を提案することが可能となる。

    また、AIとの会話データ(VoC:Voice of Customer)は蓄積・分析され、提案精度の向上や商品開発へフィードバックされる仕組みとなっており、利用すればするほどパーソナライズの精度が高まる設計だ。

  • ノーコードで実現!人事データの不整合を自動抽出する給与監査システムの構築方法を解説

    ノーコードで実現!人事データの不整合を自動抽出する給与監査システムの構築方法を解説

    給与計算担当者は、毎月その計算結果が「本当に正しいか」を検証する業務が発生します。

    給与計算ソフトは、設定された数式通りに計算を行う点では完璧です。

    しかし、勤怠データの入力ミス、社会保険料の改定漏れ、あるいは手当の支給要件の勘違いといった「入り口」のミスや「判断」の誤りまでを自動で防いでくれるわけではありません。

    これらを確認する作業は、時間と集中力を要する上に、非常に属人的な「ブラックボックス」になりがちです。

    また、万が一ミスがあれば、従業員との信頼関係を損なうだけでなく、法的リスクにもつながりかねません。

    そこで本記事では、ノーコード自動化ツール「n8n」を活用し、「システムが計算の不整合を自動で炙り出し、人間が最終判断する」という、給与監査ワークフローを提案します。

    給与監査自動化システムにおける4つのフェーズ

    給与計算に監査は、単に計算式が合っているかを確認するだけでなく、人事発令との整合性、変動の妥当性、そして最新の法令への適応といった多層的な検証にあります。

    本章では、この検証を実行するシステムを構築するためのフェーズを4つに定義しました。

    1.データ集約と正規化(インプット・フェーズ)

    まず、Google Driveなどのクラウドストレージを監視し、複数のシステムから出力される給与関連データを自動収集します。

    収集対象は、勤怠システムからの「総労働時間」、人事システムからの「基本給・家族構成」、現場提出の「経費・インセンティブExcel」などです。

    これらのデータは形式がバラバラであることが多いため、システムが計算可能な状態に項目名を統一し、VLOOKUP関数などを手動で組む手間とミスを排除します。

    データはExcelのような装飾や計算式を含まない「CSV形式」をあえて採用することで、システムが数値を純粋かつ正確に読み取れる状態(正規化)を担保します。これにより、手動でのデータ整形に伴うミスを排除します。

    2.厳密な照合ロジックの実行(ロジック・フェーズ)

    二つ目は、ロジックフェーズです。

    このフェーズでは、インプットフェーズで集約したデータに対し、多層的な「監査ルール」を一斉に適用します。

    例えば、人事側の「最新等級・基本給」と給与側のデータを直接突き合わせ「等級は上がっているのに基本給が据え置き」といった乖離をあぶり出したり、勤怠実績の「分単位の残業時間」に割増率が正しく適用されているかを再計算したりします。

    また、前月の支給実績と比較し、「20%以上の増減」などの極端な変動がないかをスキャンするといったことや、経費精算やインセンティブのデータが重複していないか、入力桁数の間違いがないかといった「ヒューマンエラー」を自動で炙り出す場合も、このフェーズで設定します。

    他にも、社会保険料率の改定や、年齢に応じた介護保険料の徴収開始タイミングなど、法改正に伴う「公的な計算基準」が正しく反映されているかをチェックし、適法性を担保することも可能です。

    3. 例外リストの自動生成(アウトプット・フェーズ)

    全ての照合が終わると、システムは「正常」と判断した膨大なデータをスキップし、確認が必要な項目だけを抽出した「例外リスト」を生成します。

    その際、Google Sheetsなどを用い、不整合が見つかった従業員の「従業員番号」「氏名」「エラー理由(例:残業代の計算不一致、社保改定漏れの疑い)」を自動で追記させます。

    これにより担当者は、システムが提示した「疑わしいデータ」だけを確認するだけで済み、目視チェックによる精神的・時間的負荷から解放されます。

    4. 承認プロセスと監査ログの記録(ガバナンス・フェーズ)

    担当者が異常値を精査し、修正または「問題なし」と判断したアクションは、すべてシステム上にログとして保存されます。

    これにより、「誰が、いつ、どの数値を承認したか」がデジタル証跡として残るため、将来的な会計監査や労働基準監督署の調査に対しても、高い透明性を持った給与支払い体制を証明することができます。

    n8nを活用したシステム構築方法

    では実際に、システムの具体的な構築ステップを解説します。

    今回は、「n8n」というワークフロー自動化ツールを活用し、Googleドライブ上の給与・勤怠データを自動照合することで、不整合(異常値)を抽出するというシステムを構築します。

    「n8n」は、異なるアプリやサービス同士を「ノード」と呼ばれるアイコンで繋ぎ合わせ、業務を自動化するツールです。

    AIノードを組み込むことで、AIエージェントとしての運用も可能ですが、今回は「設定した計算式やルールに則って正確にデータを制御・統合する」ツールとして活用しています。

    ワークフローの全体像

    まず、具体的な設定に入る前に、今回構築したワークフローの全体的な流れを整理します。

    このシステムは、大きく分けて「検知・取得」「解析・正規化」「照合・仕分け」「出力」の4つのプロセスで構成されています。

    このプロセスに対し、「Google ドライブトリガー(検知)」「ファイルをダウンロード(取得)」「ファイルから抽出(解析)」「もし(照合・仕分け)」「シートに行を追加する(出力)」というノードで繋ぎ合わせています。

    ノーコードで実現!人事データの不整合を自動抽出する給与監査システムの構築方法を解説
    ワークフローの全体像

    このように、左から右へとデータが流れる過程で、「人間が1件ずつ照合する」という作業を肩代わりする仕組みになっています。

    それでは、各ステップの詳細な設定を見ていきましょう。

    検知・取得(インプット)

    まず、クラウドストレージ(今回はGoogle Drive)へのファイル保存をトリガーに、後続の処理が動き出す「プッシュ型」の仕組みを構築します。

    一つ目のノードは「Google Drive Triggerノード」で、指定したフォルダに新しいファイル(CSV)がアップロードされたことを検知し、ワークフローを起動させます。

    これにより、担当者が最新の給与・勤怠データを指定のフォルダにアップロードすることで、ツールを操作することなく自動でチェックが始まる体制が整います。

    ノーコードで実現!人事データの不整合を自動抽出する給与監査システムの構築方法を解説
    Google Drive Triggerノードの設定画面。監視対象のフォルダや実行条件を詳細に指定する。

    具体的な設定画面では、まず接続するGoogleアカウントを選択し、監視のタイミング(Poll Times)を「Every Minute(毎分)」などに設定します。

    次に、監視対象(Trigger On)を「Changes Involving a Specific Folder」とし、対象のフォルダを指定します。

    さらに、実行のきっかけ(Watch For)を「File Created」に設定することで、新しいファイルが置かれたときのみ動作するように限定します。

    そして、トリガーが検知した最新ファイルの「ID(識別番号)」を、二つ目の「Google Drive Downloadノード」が取得し、対象のファイルをダウンロードします。

    この際、トリガーノードから渡された「File ID」を動的に指定することで、常に最新のファイルだけを確実にダウンロードすることが可能です。

    ノーコードで実現!人事データの不整合を自動抽出する給与監査システムの構築方法を解説
    Google Drive Downloadノードの設定画面。トリガーから渡されたファイルの識別番号(ID)を「{{ $json.id }}」という変数で受け取り、対象のCSVファイルを自動でダウンロードする。

    ここでは、Operationを「Download」に設定し、対象ファイル(File)を「By ID」で指定します。

    上図の右側の出力結果(OUTPUT)を見ると分かる通り、これにより給与データがシステム内にバイナリデータとして取り込まれ、解析の準備が整います。

    解析・正規化(データ整理)

    しかし、ダウンロードされたバイナリデータは、まだシステムにとっては「ただのデータの塊」です。

    そこで、「ファイルから抽出ノード」を配置し、中身を1行ずつのリスト形式に展開することで、システムが「名前」や「基本給」といった項目ごとに内容を読み取れる状態に整理します。

    ノーコードで実現!人事データの不整合を自動抽出する給与監査システムの構築方法を解説
    Extract from Fileノードの設定画面。

    ここでは、Operationを「Extract From CSV」に設定し、直前のステップで取得したバイナリデータ(data)を読み込ませることで、「従業員番号」「基本給」といった項目が構造化されたデータとして抽出されます。

    また、計算の正確さを守るため、あえて装飾のない「CSV形式(カンマ区切りのデータ)」を使用します。

    Excelファイルのようにセルの中に色や計算式が混ざっていないため、システムが純粋に数値だけを確実に読み取ることができ、計算ミスやエラーを未然に防ぐことができます。

    照合・仕分け(ロジック)

    次に、If(条件分岐)ノードにより、全従業員のデータを一瞬で検証する自動照合プロセスを実装します。

    ノーコードで実現!人事データの不整合を自動抽出する給与監査システムの構築方法を解説
    Ifノードの設定画面。理論上の残業代と実際の支給額を比較している。

    ここでは、「月間所定労働時間」を160時間とし、時給を1.25倍に設定して、理論上の「残業代」を算出します。この計算を人間が電卓を叩く代わりに行わせるため、以下の検証ロジックを組み込みます。

    検証ロジック(例): {{ Math.round(Number($json[“基本給”]) / 160 * 1.25 * Number($json[“法定外残業時間”])) }}

    設定画面の「Conditions」にこの数式を入力し、比較対象(Value 2)には、CSVから抽出された実際の「残業手当」の値を指定します。そして、比較演算子を「is equal to(等しい)」に設定します。

    この理論上の計算結果と、実際に支給されている「残業手当」を比較することで、n8nが計算の一致する「真実(True)」ルートと、不整合が生じている「間違い(False)」ルートに、全件データを自動的に仕分けます。

    このようにIfノードを用いることで、「正常なものはそのまま通し、確認が必要な例外だけを抽出する」という例外管理の仕組みを構築することができます。

    出力(アウトプット)

    最後に、照合ロジックで「間違い(False)」ルートへと振り分けられた不整合データのみを抽出し、管理者が確認すべき「例外リスト」として自動出力します。

    ノーコードで実現!人事データの不整合を自動抽出する給与監査システムの構築方法を解説
    Google Sheets(シートに行を追加する)ノードの設定画面。

    あらかじめ出力先となるスプレッドシートを作成しておき、Google Sheetsに行を追加するノードの設定画面で、異常が見つかった従業員の「従業員番号」「氏名」「エラー理由」を自動で追記(Append)するよう指定します。

    これにより、「不整合」と判定されたデータのみが、その理由と共に自動的に記録されています。

    ノーコードで実現!人事データの不整合を自動抽出する給与監査システムの構築方法を解説
    「不整合」と判定されたEMP002(佐藤花子さん)のデータが自動的に記録されている

    ここでの「不整合(異常データ)」とは、単なる計算ミスだけでなく、入力時の誤字や、本来支払われるべき残業代が不足している「未払い」の可能性などを指します。

    システムがこれらを自動検知することで、担当者は全件をチェックする手間から解放され、「疑わしいデータ」のみに集中して確認作業を行うことが可能になります。

    なお、今回は「残業代」に絞った照合を行いましたが、このワークフローは拡張することも可能です。

    例えば、Ifノードを更に追加して「深夜手当の計算不一致」や「社会保険料の控除額チェック」などの条件を連結させることで、より多角的な監査システムへと進化させることができるでしょう。

    一つの大きなプログラムを作るのではなく、判定条件(ノード)をパズルのように組み合わせることができるのが、ノーコードならではの設計思想です。

    運用におけるリスク管理と対策

    システムが完成し、自動で動くようになると、つい「すべてお任せ」にしたくなります。

    しかし、給与という極めて重要なデータを扱う以上、想定外の事態に備えた「守り」の設計が不可欠です。

    そこで最後に、システムを安全に使い続けるためのリスク管理のポイントを整理します。

    「型」の不一致によるエラーを防ぐ

    システムは「数値」と「文字」を厳密に区別します。

    CSVから読み込んだ数字が、システム上で「文字」として認識されてしまうと、正しい計算ができずに全員がエラー判定されてしまうリスクがあります。

    そこで、数式の中で Number関数を使い、強制的に数値として扱う処理(型変換)を徹底します。

    また、n8nのIfノードにある「必要に応じて型を変換する(Convert types where required)」設定を有効にしておくことで、データの形式に左右されない強固なロジックを維持します。

    計算結果の「わずかなズレ」への許容

    割り算を含む計算では、小数点以下の端数が発生します。理論上の計算結果が25,000.0001で、支給額が25,000 だった場合、人間は「一致」と判断しますが、システムは「不一致」とみなしてしまいます。

    そこで、Math.round(四捨五入)などの関数を活用し、計算結果を整数に整えることで、1円未満のわずかな差異による誤判定を防ぎます。

    会社の規定に合わせて、切り捨てや切り上げを使い分けることが重要です。

    「人間による最終確認」をプロセスに組み込む

    自動化の目的は、人間を排除することではなく、人間が「最終判断」に集中できる環境を作ることです。

    万が一、システム側の数式設定ミスやデータの不備があった場合、自動ですべてが完結する仕組みだと、誤ったまま処理が進むリスクがあります。

    そこで、システムの役割を「異常のあぶり出し」に限定します。

    出力されたスプレッドシートを見て、担当者が「なぜこの不整合が起きたのか」を確認した上で、給与確定の判断を下すという運用フローを構築することが重要です。

    ワークフローの有効化と監視

    n8nを「Active(有効)」にすると、画面を閉じていても自動で処理が実行されます。

    これは便利である反面、気づかないうちにエラーで処理が止まってしまうリスクもあります。

    そこで運用開始後は、定期的にn8nの「実行履歴」を確認する、あるいは、エラーが発生した際にのみSlackやメールで管理者に通知が届くような「エラー通知ノード」をワークフローの最後に追加することも有効でしょう。

    まとめ

    給与計算という業務は、毎月、膨大な数字と向き合いながら目視チェックに追われ、担当者の心身に大きな負荷をかけてきました。

    今回ご紹介した給与監査の自動化は、システムが正確なロジックに基づいて全件をスキャンし、人間は「異常」と判断された箇所にだけ労力を投入することができます。

    この「例外管理型」の体制へと移行することで、担当者の役割は「数字を合わせる作業者」から、給与制度の正当性を担保する「管理・監督者」へと進化します。

    まずは、今回構築したような「給与と勤怠の自動照合」などスモールスタートし、徐々に人事マスタや法令チェックへと範囲を広げていくのが良いでしょう。

    本記事が、あなたの会社のバックオフィスがよりスマートで、より信頼される存在へと進化するための一歩となれば幸いです。

  • SUPER STUDIO、ショップ専用のAIエージェント構築可能な「ecforce AI」有償版を提供開始

    SUPER STUDIO、ショップ専用のAIエージェント構築可能な「ecforce AI」有償版を提供開始

    AIコマースプラットフォーム「ecforce」を提供する株式会社SUPER STUDIOは、EC事業に特化したAIエージェント「ecforce AI」の有償版を開発し、同年3月2日より提供を開始すると発表した。

    同社は2025年8月から「ecforce AI」の無償版を提供してきたが、利用が進むにつれて「AI活用の属人化」という壁に直面した。担当者ごとにAIへの指示(プロンプト)の方法が異なり、出力される品質や判断基準がバラバラになっていたためだ。

    また、プロンプトの微調整に多くの工数が割かれるという本末転倒な事態も発生していた。

    そこで今回発表された有償版では、こうした課題を解決するため、ショップやブランド独自のナレッジ、運用ルール、判断基準をAIエージェントに実装することができる。

    これにより、経験の浅いスタッフであっても、組織として統一された基準に基づいた施策立案や顧客対応が可能となり、業務の標準化と成果の再現性が担保される。

    また、有償版では、最大5つまでのAIエージェントを作成・管理できる。例えば、「戦略立案用」「カスタマーサポート用」「クリエイティブ制作用」といった具合に、役割ごとに最適化されたエージェントを使い分けることが可能だ。

    さらに、基盤となるAIモデルには、ChatGPT、Gemini、Claudeといった主要なLLM(大規模言語モデル)を採用しており、ユーザは用途に応じてモデルを選択できる。

    精度の高さが求められる意思決定支援には高性能モデルを、日常的なたたき台作成には低コストモデルを適用するなど、業務内容に合わせて品質とコストのバランスを最適化できる設計となっている。

    加えて、企業利用を前提とした管理機能も強化された。メンバーごとの権限設定や、AIエージェント単位での利用制限が可能となり、実務プロセスに即した拡張が行われている。

    利用量に関しても、分析機能によりどのエージェントやモデルがどれだけ使われているかを可視化し、運用の改善に役立てることが可能だ。

    なお、有償版の申込受付は2月6日より開始しており、既存の機能については、一定の利用量まで引き続き無償版として提供されるとのことだ。