先日開かれた、iSTC EVOLUTION TOKYO2019において、i Smart Technologies(以下iSTC) 代表取締役社長CEOの木村哲也氏が登壇し、自社のサービスの展望について話した。
iSTC社の製造ライン遠隔モニタリングサービスの歴史
iSTCの社長である木村氏は、同時に旭鉄工という自動車部品を製造する企業の社長でもある。まだ製造ライン遠隔モニタリングがない頃、牽引フックで、顧客から日に3,000個製造する依頼がきたのだが、その時点での最大の生産量は2,568個でしかなかったのだという。これまでの考え方では、増産するには、製造ラインを増設したり、平日残業をする必要があった。
そこで、生産性を改善し、今の設備のままでも製造できる状態にする取り組みをしようとした。しかし、生産性を見るツールとなる「あんどん」を導入するだけでも高くつく。もっと安くリアルタイムにラインが動いているのか、止まっているのか把握したいという要望が製造ライン遠隔モニタリングシステムの始まりだったのだという。
一方で、旭鉄工の製造ラインは、いわゆる昭和の産業機械で構成されている。「どんな産業機械でもデータを取るにはどうしたらよいか」という悩みを解決すべく、シグナルタワーに光センサーをつけたり、産業機械の開閉部に磁気センサーをつけたりしてサイクリックな動きの状況を取得できるようにしてきた。
こうして、レトロフィットな産業機械でも、リアルタイムに稼働状態が取れるようになり、集めたデータで改善を行っていったのだ。
改善のポイントは「生産個数」「停止時刻と時間」「サイクルタイム」
iSTCは、改善の普遍量として、「生産個数」「停止の時刻と時間」「サイクルタイム」を定義した。
生産数=(稼働時間-停止時間)/サイクルタイム
これらの値を取得することで、「どこの現場であっても」改善が進むと考えたのだ。
実際にデータを基にした改善活動をやることで、さらに「データを複数のラインで見たい」「一箇所に集めてみたい」という要望がでた。そこで「製造ライン遠隔モニタリングサービス」を作ったのだという。
これが、今回発表のあった「iXacs」の前身のサービスとなる。
こうして、旭鉄工では、現場の改善とシステムの工夫によって、出来高は69%増となり、顧客からの増産要求に対しても設備投資の必要が無くなったということだ。
中小企業の生産性改善要求にこたえる「iXacs」
こうして生まれたiXacsの特徴は以下の通りだ。
- 設備を選ばず簡単導入ができる
- 使用料金が一日300円/ライン
- 自社で使って改善効果があったという実績
現在200社程度に導入されていて、うち80%が中小企業で利用されているということだ。

経営指標、フィンテックとしてのIoTデータの活用
また、木村氏は、「製造のIoTデータが実は経営のデータとも似ていて、金融やM&A、統計などを変える」と考えている。
なぜなら、
- IoT生産数は、売り上げを表現している
- IoTの稼働時間は労務費を表現している
- IoTの停止時間は改善余地を表現している
からだ。
資金調達の際、中小企業では地域の銀行から融資を受けるわけだが、銀行員が工場にいっても工場の実態はよくわからない。そこで、金融機関がIoTデータを見ることで、現状がわかり、融資判断が精緻化するというわけだ。
これまでは製造業の評価は、財務判断でしか行うことができず、金融機関の担当者が工場にいったところで、実力を判断することはできなかった。しかし、財務諸表とIoTデータから出るレポートを見ることで、実体の状況も把握できるようになり、デューデリジェンスの基礎情報ともなるのだ。
また、木村氏は「もっと多くの企業のIoTデータが集めれば、正確な経済動向すら把握できる」と考えている。
これは、iXacsはクラウドサービスなので、多くの製造業の現場で、どのくらいの生産が実際に行われているかをつぶさにみることができるからだ。
現在、東京海上日動と新しい保険サービスを開発したり、クレジットプライシングコーポレーションと提携した金融サービスを開発しているということだ。
(撮影協力:集合写真家 武市真拓氏 https://sshonpo.com)