「境目」にこそ、ビジネスモデルを変革するチャンスがある
小泉: では、まずは自分たちのビジネスモデルを紙に書いてみることが大事かもしれませんね。サプライヤーやお客様なども全部書き出してみて、それらとの「つなぎ目」に着目し、そこに対して自分たちなら集められるデータの価値に気づいて、値付けをしていく。そうすれば、データの活用や流通が可能になってくるかもしれません。
八子: さらに言えば、データはビジネスのシミュレーションに効果を発揮するわけですから、そうすると未来の予測にフォーカスがいきます。来年の今の予測をする場合や、1週間後の出荷状況の予測をする場合に、どのようなデータが必要なのか。誰がそれを持っているのか。そこに対してアプローチして行くことが重要です。
机上のプラットフォームがまんなかに「どん」とあって、今どんなデータがありますか、という議論をするだけでは、過去のデータにしか目がいかないことになってしまいます。

小泉: 私の知っている農業の事例では、「来月の〇〇日に出荷できる野菜の量」が初めからわかっているといいます。なぜなら、それは土中の温度を測定することで、わかるからです。ある温度をこえると、「今が出荷のタイミングだ」と経験的にわかるのです。
ですから、そのデータを使えば、「いつ何トンの野菜が出荷できます」というように、スーパーなどに対して営業をかけやすくなります。野菜は天候などに影響されますから、安定供給は大手のスーパーにとって最も重要です。つまり、大手スーパーからサプライヤーに求める条件は、「安定供給」なのです。その企業はそこに着目したんですね。
野菜を作っている人、売る人、それぞれの境目で重要なことは、「正確な出荷量がわかること」なのです。この事例はデジタルの話ではないのですが、「境目」というのはこうしたことですかね?
八子: そうですね、生産者とマーケットの間には大きな境目がありますから。私がアドバイザーを務めている高知県のプロジェクト「IoP(Internet of Plants)」でも、施設園芸システムにIoTやAIを活用して、作物がいつどれだけ出荷できるかを正確に把握できるしくみの構築を目指しています。農作物はたくさん売っても値崩れしてしまいますから、バランスが難しい。畜産もそうです。だからこそ、そうした貴重なデータであれば、有償でも欲しいですよね。
小泉: うまく「境目」を見つけて、儲かるビジネスモデルを考え、そこで必要なデータを取っていく――この流れが大切ですね。もちろん、初めからは難しいので、PoCが必要な場合もあるでしょう。そこで、技術の検証ではなくビジネスの「概念実証(Proof of Concept)」をきちんと行うことで、みなさんの企業にとってどのようなデータが必要であるかがわかってくると思います。本日はありがとうございました。