進まないプラットフォームの活用、乗り越えるカギは「境目(さかいめ)」のデータ ―八子知礼×小泉耕二【第22回】

IoTが「1周」したことで、ようやく必要なものが見えるようになった

小泉: そうか……。今まで「とりあえず」でためてきたデータがすべてのアプリケーションで使えるわけではありません。ためた結果必要なものがわかり、そこで初めて不足しているデータに気づくわけですね。

八子: そうです。ですから、一回ぐるっとまわって、「IoTにもっと真面目に取り組まないといけないな」という結論に戻ってきているのです。ガートナーが8月30日に発表した「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」で、IoTはようやく「過度な期待」のピークを抜けたわけですが、ここにきて、データを蓄積できていないという現状が露呈するとともに、どういうデータが必要で、どのようなアプリケーションで使われるか、それはどのような現場の課題を解決するのか、というところが焦点になってきたのです

小泉: 解決したかったことが不明確なまま、何となくデータを取っているだけじゃだめだと。

八子: もちろん当時からそれは課題とされていたのですが、どちらかというと、まずはプラットフォームの考え方があり、その先にアプリケーションの構築やデータの流通といった話が来てしまったのです。これは、私たちにも責任の一端はあると考えています。

そうした全体のロードマップから、「将来はこうなりますよ、だから今IoTに取り組みましょう」という話をこの数年ずっとしてきたわけですが、データが十分にたまっていないのに、一足飛びにプラットフォームにとびついてしまった感も否めません。

進まないプラットフォームの活用、乗り越えるカギは「境目(さかいめ)」のデータ ―八子知礼×小泉耕二【第22回】
株式会社アールジーン社外取締役/株式会社ウフルCIO(チーフ・イノベーション・オフィサー) IoTイノベーションセンター所長兼エグゼクティブコンサルタント 八子知礼

小泉: 確かに、「とりあえずプラットフォームをつくってしまおう」という流れはありましたね。Googleのような企業があまりにも巨大なプラットフォームを作ってしまったものだから、焦ってしまった部分もあったと思います。

八子: Googleが扱うような「インターネットデータ」対「産業データ」という構図は、2017年頃から議論されていましたね。ただ、ひとくちに「データ」とはいっても、オープンにするものとそうでないものの区分――いわゆる「協調領域」と「競争領域」――が重要ですが、企業にとってはその区分がなかなかわからないのです。自社の事業モデルの中で何が最も重要なプロセスで、競争優位になるのかをそれぞれの会社が識別しきれていない――価格情報が競争優位なのか、それともオペレーションの部分なのか。そこを明白にしていかないといけません。

小泉: 企業がそれぞれのビジネスモデルを考える場合に、自社のモデルだけじゃ考えつくされていて行き詰まり感があったのは事実ですよね。ただ、いきなりエコシステムなどと言って、別の会社と組んで儲ける、といった話がすぐに進むわけではありません。その拠り所としてIoTなどのテクノロジーがあったわけですが、無理やりそこに寄ってしまった感は否めません。

では、企業はここでいったん踏みとどまって、あらためて自分たちの事業を見直すことが重要ですね。昨今だと「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉もできていて、デジタル化は単純にテクノロジーの利用ではなく、ビジネスモデルの変える話だとわかっている人も増えていると思いますから。そこの議論を再度進めていくことが大切でしょう。

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