コスト削減が頭打ちになるのは、生産現場の「工夫」に頼っているから
八子: 2000~2005年あたりに、企業活動の全体のデータを集めて事業の最適化を行う「エンタープライズデータモデル(EDM)」という概念が注目されました。本来、このEDMが定義できてしまえば、設計から製造、オペレーションまで、一気通貫でデータを中心に語れるはずです。
小泉: でも、それができなかった。そのしわ寄せが生産現場に行って、その人たちが「工夫」して何とか対応してしまうという状況になっている。そして、それを「現場の力」と言ってしまっているわけですね。
しかしこれでは、新しい案件が入ってきた時に、何度も同じような検証を繰り返さないといけないわけですよね。ノウハウのある同じ人が何度も担当するならいいですが、別の人が担当になると、「ノウハウが足りない」とか「技術の継承尾ができていない」というように論点がすり替わってしまう。

八子: デジタルの時代においては、コストはある地点をこえると、それ以上増えてはいけない。コストが増えなくても、製品のパターンと収益は増えるようなしくみを整えてないといけないのです(それができるのが、デジタルの力なのです)。
今、製造業では生産性の改善が注目されていますが、結局多くの場合は、不要な手間やコストが2重3重に発生していて、同じバリューチェーンの中を行ったりきたりしているわけです。本来は、別の製品をつくるのであれば、基本的なしくみはそのまま踏襲して、異なる部分だけを変えればいいのです。それなのに、毎回同じことをしている。
小泉: 産業向けの通信機械をつくっている台湾のアドバンテックなどを見ていると、カスタマイズ品がとても多いです。見た目は同じに見えるのですが、品番は違う。彼らは、こうしたカスタマイズ品をつくることを恐れていません。あくまで想像ですが、設計から製造までがデジタルでつながっているので、お客のさまざまなニーズに対応でき、今も成長している企業になっているのではないかと思いますね。
八子: 彼らは、カスタマイズ品をつくる際に、何らかの手を加えたからといって、もう一度同じ手間が発生しないようなものづくりをしています。デジタルの時代ならではだと思います。企業はこれから、「一回つくった製品の上には薄いコストしかのっていない」という発想でものづくりをしないといけません。
小泉: 自動車産業も、生産現場においてモジュール化がようやく浸透してきました。そのように、再利用できるモジュールをうまく使ってものづくりを進めていくという考え方が、これから製造業全体としてますます重要になっていくのでしょう。それができて初めて、「マスカスタマイゼーション」のものづくり実現するのだと思います。本日も貴重なお話、ありがとうございました。