企業はDaaSの活用に向け、”社内体制”を確立すべし
また、「データエコシステム」においては、IoT領域/非IoT領域/物理空間のバリアフリーが重要になると鳥巣氏は指摘。特にIoT領域と物理空間の垣根を超えることが重要となる。
たとえば、「Fitbit」のようなスマートウォッチ。企業は社員のバイタルデータを収集することで、健康管理に活用できる。一方、提供するフィットビットの側においては収集した膨大なIoTデータの活用にフォーカスされがちだが、実は同社が重視しているのは「物理空間」へのフィードバックだという。
つまりは、ヒトの「働き方改革」である。たとえば、社員は自身が持つバイタルデータを共通項にして、他の社員とのコミュニケーションを深めることができる。
とかくもデータそのものが注目されがちだが、最終的には物理空間に働きかけ、ヒトの気持ちやモチベーションを動かすことを想定していなければ、価値のあるサービスとはならないのだ。

これまで、データエコシステムを推進している企業の事例や、成功のポイントについて鳥巣氏の解説を紹介してきた。しかしそれはまだほんの一部の企業に限られる。また、既に単独でデータ連携の基盤を構築しているGoogleなどの企業は脅威だ。
そこで、あらゆる産業・業種のデータを自由に組み合わせ、全方位的にビジネスを拡大できるようなデータ流通のしくみが重要となる。その基盤を「Data as a Service(DaaS)」と呼ぶ。
では、そのDaaS基盤の構築に向けた取り組みはいまどれほど進んでいるのだろうか。鳥巣氏によると、商用化に至っているデータ活用の事例はまだ多くはないという。
ただ、KDDIが2017年から提供開始した「IoTクラウド Data Market」や富士通が本年5月より開始した「Virtuora DX」、本年2月にYahooが発表した「データフォレスト構想」などがDaaSに該当する。
一方、「データ流通推進協議会」(本年5月時点で100社以上が加盟)のように、複数のプレイヤーがコンソーシアムをつくり、政府のバックアップも得ながらデータ流通を推進する活動も進められている。
「データ流通」を活性化させるためには、何が必要なのだろうか。IDC Japanがデータ流通に関わる企業40社を取材した結果、次の3つの条件をクリアする必要があるという。
1つは、「技術/基盤の信頼性」だ。データ流通においては、データの漏洩、改ざん、不正利用が行われない技術基盤が大前提となる。
また、企業によっては外部に公開/提供してよいデータとそうではないデータ(ノウハウ)がある。それを分離できるようなしくみも必要だ。また、いざ問題が起きた時に、コミュニティの機能を通じて参画するすべての企業がその情報を共有できる体制が必要である。
次に、「法制度/政策/企業施策との整合性」だ。IDCが最も重要だと考えているのが、データの公開権限範囲と社内申請プロセスだという。
社内でIoT活用のアイディアがあり、その実現のためにデータ流通が必要である場合、どの部署に何を申請するべきかだろうか。鳥巣氏によると、明確に決まっている企業はほとんどないという。
「法務部の誰に訊けばいいのか、企業内のキーパーソンは誰なのかをはっきりさせる必要がある。社内の体制確立が急務だ」(鳥巣氏)。
最後に、「マインドセット/慣習/文化の適応性」だ。最近では、オープンイノベーションを目的としたコンソーシアムが次々と立ち上がっている。しかし、「オープンイノベーションありきの発想はダメ」だと鳥巣氏は指摘する。
とりあえずコンソーシアムに加入し、”うまくいかなかったら辞める”という日本企業が多いという。
「企業はコンソーシアムに入る前に、計画したIoTビジネスがマネタイズできるかどうかを明確にしておくべきだ。あくまでそこで不足したパーツをオープンイノベーションで補うという発想を持たなければならない。これは企業においても、スマートシティのような公共系の案件においても重要になる」と鳥巣氏は述べた。
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・IDC Japan