事業会社は、SIベンダーは、ネットワークベンダーは、今後IoT市場をどう見ていくべきか? ー国内IoT市場のテクノロジー別市場予測 IDCレポート

リサーチ会社のIDCは、国内のIoT市場のテクノロジー別市場予測を発表した。

その中で、コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの鳥巣 悠太氏は、現在IoTのユーザ支出額は、2016年で5兆円、毎年17%成長をしており、2021年には11兆円市場になると報告した。

IDC  国内IoT市場のテクノロジー別市場予測

この市場予測は、IDCにおいては国内のIoT市場を、20の産業分野、49の用途によって分析し、12のテクノロジー領域で市場予測を行った結果だということだ。

市場拡大を牽引するのは、IoT Enabledソリューション

昨今、「日清食品のカップ麺の工場での作業員の生産性を向上する」「ブリジストンのタイヤ工場でIoTや機会学習を活用してタイヤの歩留まりを向上する」といった、これまでITベンダーからみると顧客企業であった企業が、自らデジタルを活用したサービスを提供しだしている。

これらの動きは、「IoTのベンダーからIoTのリソースを仕入れ、社内のIoT用途に使っている」といえる。

また、現在注目されているのが、「ファナックの製造業におけるダウンタイムを軽減するソリューション」や、「GEの航空機エンジンや飛行機のモニタリングにより航空サービスを最適化する」、「コマツが建機や建設現場の最適化を行う」といった事例にみられるように、社内で利用するだけでなく、社外(お客様)にもIoTのソリューションを提供するという動きがあるというのだ。

IDC  国内IoT市場のテクノロジー別市場予測

後者を鳥巣氏は、「IoT Enabledソリューション」と呼んでおり、今後いろんな産業分野に広がっていくことで、IoT市場を牽引していくのだと述べた。

ユースケース別に、IoT Enabledソリューションの広がり

IDC  国内IoT市場のテクノロジー別市場予測

IoT市場を構成する36個のユースケースの中で、現在、ベンダー(既存SIerなど)と事業会社が提携することで、様々なIoT Enabledソリューションが出てきているという。今回の発表では以下の3分野が紹介された。

例1:コネクテッドビルディング

IoTを活用した、照明や空調、エレベータなどの施設管理をする分野だ。ゼネコンとプラットフォーム企業が提携することで、サービスの提供が始まっている。

竹中工務店xマイクロソフトがこの例にあたる。

建設アセット管理

コマツ、キャタピラーなどが行っている、建設業界におけるアセット管理ソリューションの分野だ。

テレマティクス保険

車載機をつかって、ドライバーの運転を可視化し、安全運転をするドライバーに対する保険料を引き下げる、いわゆる「テレマティクス保険」の分野だ。これは、損保ジャパンなどが活用している。

サービスの観点から見たIoT市場の成長

IDC 植村氏

また、ITサービスのうち、IoTに向けられたものに関するサービスの市場予測も行ったという。サービスの市場は、2016-2011で21.8%の成長率になると述べた。

IDC  国内IoT市場のテクノロジー別市場予測

ところで、「IoTサービス」というものにはどういうものが含まれているのだろうか?

ITサービス シニアマーケットアナリスト 植村 卓弥氏によると、以下の図のように、大きく3種類にわかれているというのだ。

IDC  国内IoT市場のテクノロジー別市場予測

(1)IoT向けITサービス

SIサービスやカスタムアプリケーションサービス

(2)IoT向け非ITサービス

ビジネスコンサルティングサービスに代表されるように、非ITサービス(ビジネスサービス)

(3)IoTを活用した業務サービス(IoT Enabled)

IoTを活用することで実現したサービス。

今後、拡大する領域は(1)(3)とみられており、(1)の分野がドライブすることで、(3)が拡大すると考えているといことだ。

IDC  国内IoT市場のテクノロジー別市場予測

予測としては、2016-2021では64.8%という高い成長率が考えられている。ITサービス全体としては底成長率で、1-2%というところなので今後、IoTの分野への参入は必須となる流れだろう。

また、この成長を支える要素としては、「デジタルトランスフォーメーションの進行」「PoCの本格案件化」「基幹システムとの連携領域の拡大」「新たなビジネス創出支援」ということが考えられているという。

社会全体におけるデジタルトランスフォーメーションが進行することで、具体的な案件につながり、PoCの本格化や、ERPや生産管理システムとの連携、2021にかけて特に後半部分では、非製造業も含んだIoT Enabledを支援するような領域が拡大していくということなのだ。

逆に阻害要因としては、「人材不足」「ユーザによる内製化の進行」が考えられているということだ。

課題1:PoCからのスケールの拡大

調査によっても、7割くらいの企業担当者が情報収集やパイロット、PoCの段階から脱却できていない状態である、ということがわかっていて、実際ヒヤリングによってもパイロットやPoCの段階でスタックする案件は少なくないというのだ。3年かかってやっとPoCにたどり着いたというような案件もあるという。

今後、サービス事業者にとってみれば、経営/意思決定者を巻き込むことや、案件の絞り込みも重要になっていくだろう。

課題2:データ連携における障害

IoTの活用とは、データの連携によって価値を出すものだという認識が広がっている。一方で、とある工場で始まったIoTのプロジェクトを他の工場でも活用するというような例で、部門間の壁があることで、大きな流れになりづらいという問題が起きているという。

大手の製造業でも、モノを作る部署と、ロジスティクスの部署が異なることでデータがつながらないということが起きている。

さらに、テレマティクス保険のように、自動車産業 x 保険産業といった、産業を横断するような連携についても、簡単には連携していくことができない、といったことが障害になっているということだ。

IoTサービス事業者にとってやるべきこと

IoTサービス事業者からみれば、サービス事業者は部門間や異業種間をつなぐ、ステークフォルダーを調整するなどの役割を果たしていくことが重要でり、ビジネスコンサルティング会社などが得意な領域といえるだろう。

また、「支援をする」サービスではなく、「自らがプレーヤーである」という認識を高めて、ビジネスパートナーとしてユースケースを創出し、PoCをみずから仕掛けていく(サービス事業者が投資も視野にいれて活動する)ことも重要だと述べた。

IoTがネットワーク機器市場に及ぼす影響

IDC 草野氏

最後に、コミュニケーションズ グループマネージャー 草野 賢一氏より、ネットワーク機器市場に関して言及があった。

草野氏によると、「ネットワーク機器市場は成熟市場だ。しかし、IoTがこの成熟市場に刺激をあたえるのではないかと考えている。」というのだ。

IDC  国内IoT市場のテクノロジー別市場予測

IDCによる定義としては、製造現場におけるネットワーク(産業用ネットワーク)がIoTのネットワークだと定義されているが、工場の中では様々な機器をネットワークに繋ごうという動きがでている。

産業用ネットワークとITネットワークでは違いがあり、温度や水、ほこり、振動、など過酷な設置環境が問われたり、使用期間も最低10年は前提とされているものがIoTネットワークだという。主なプレーヤーもITとは異なっているという特徴があるのだ。

IDC  国内IoT市場のテクノロジー別市場予測

この分野に関して、成長性という面でみると、2016年でも前年比1.5-2倍程度の伸びを示しているという。

技術的には、従来型の「フィールドバス技術」から「イーサーネット/IPネットワーク」を使った世界に、「固定から無線へ」「無線技術の次世代化・5G」と変わっっていくことが考えられている。(下図)

IDC  国内IoT市場のテクノロジー別市場予測

さらに、今後は、ITのネットワークとIoTのネットワークにおける統合が進んで行くと考えられていて、OTネットワークを高度化していくという流れがあるということだ。

しかし、「つないでしまう」ことによる課題もあり、「セキュリティ面」や「要件の異なるネットワークの両立手法の確立」、「部門間での責任のありかた」などが挙げられた。さらに、ITとOTの適度な分離も必要になるだろうとした。

今回のレポートを聞いていて、既存のSIerやネットワーク企業、そこで働く人材の動くべき方向性や、アプローチは明確になったといえる。取材をしていても、ネットワークレイヤーや業界単位でのPoCの実現、AI事業への参入と、IoT/AI分野へ進出する企業が増えてきているのも、こういった流れを汲んでのことだろう。参入タイミングは早すぎても、遅すぎてもいけないことを考えると、せめて打ち手は検討しておかなければ出遅れることになるといえるのだ。