2022年1月、IoTNEWSの会員向けサービスの1つである、「DX情報収集サービス」の会員向け勉強会が開催された。本稿では、その中から未来事業創研未来事業創研 Founder 吉田健太郎氏とIoTNEWS 小泉耕二のセッションを紹介する。
2022年1月に開催されたCES2022は、1967年から続くハイテク産業の見本市であり、テック関連企業の最新情報発信の場として期待されている。2015年からIoTやパーソナライズが大きなトレンドとなっていたが、コロナの感染拡大後のCES2021からは、社会貢献や環境問題への対応がトレンドとなっており、コロナ禍の課題を解決するテクノロジーが人々の「したい、やりたい、こうあるべき」という願いを叶えていくことをテクノロジーが実現すべきところだと明確に定義されている。
本記事では、未来事業創研未来事業創研 Founder 吉田健太郎氏とIoTNEWS 代表 小泉耕二によって行われたCES2022レポートの内容を紹介する。
CES2022のキーノートは、家電、クルマ、医療の3分野
未来事業創研未来事業創研 吉田健太郎氏(以下、吉田):CES2022のオープニング・キーノートを務めたのは、CES2021に引き続きGMでした。
アボットの新型コロナウイルス検査キットへの取り組み
IoTNEWS 代表 小泉耕二(以下、小泉):今回のCES2022で行われた発表でも、クルマについての内容が多かった印象があります。キーノートの登壇社の中にアボットやサムスン、GMが名を連ねていました。
アボットは、デジタルヘルスケアのスタートアップ企業であり、初めて健康系の企業が キーノートに登壇したことがすごいことだと感じました。また、「家電業界のサムスン」、「クルマ業界のGM」、そして「デジタルヘルスケア業界のアボット」と、この3つの業界がこの先の取り組むべき3つの大きな業界として注目されていると感じました。
吉田:アボットは、キーノートに登壇したことで、テクノロジー業界に大きな存在感を残しました。
小泉:アボットのキーノートをでは、ユナイテッド航空で国際線を利用し出入国する人が、アボットが提供する新型コロナウイルス簡易抗原検査キット「BinaxNOW Home Test」を使用するようになっているとしています。
実際に、その使用方法が、興味深いと感じました。
[wpmem_logged_out] [su_button url=”https://stg-iotnews-stage.kinsta.cloud/member-register” target=”blank” style=”flat” background=”#ff0000” size=”10″ center=”yes” radius=”5″ icon=”” class=”nanoopt”]無料メルマガ会員に登録すると続きが読めます[/su_button] [su_button url=”https://stg-iotnews-stage.kinsta.cloud/member-login” target=”blank” style=”flat” background=”#666666″ size=”10″ center=”yes” radius=”5″ icon=”” class=”nanoopt”]会員の方はこちらからログイン[/su_button] [/wpmem_logged_out] [wpmem_logged_in]まず、ユナイテッド航空は、渡航時に旅客へ「BinaxNOW Home Test」を提供し、旅客は渡航先で同検査キットを使用します。この検査結果は、eMedが提供するデジタルヘルスプラットフォーム「eMed Labs」で管理する仕組みとなっています。
具体的な検査方法は、まず初めに、ノートパソコンなどのデバイスでアボットが提供する管理アプリ「NAVICA」を立ち上げ、「BinaxNOW Home Test」に同梱しているQRコードを読み取ります。
次に、ノートパソコンなどのデバイスで「eMed Labs」を立ち上げ、デバイスに搭載されているカメラを起動し、カメラで、自身を撮影しながら「BinaxNOW Home Test」に同梱している綿棒を鼻に挿入し粘液を採取します。
カメラで撮影する理由としては、検査の結果と検査を行った者とを紐付けるためです。採取した綿棒を「BinaxNOW Home Test」に同梱している検査キットに挟むと、検査キット上に線状の印が浮き上がり、結果を判定できる仕組みです。
アボットとユナイテッド航空は、検査キットの使用者と結果を結びつけることで、不正が発生しづらい環境を整えており、有用な取り組みをしていると感じました。
クルマ業界のトレンドとGM、クアルコム、NVIDIAの取り組み
吉田:GMについては、CES2021と今回の両方を視聴していると内容に大きな変化がないことに気がつきました。
その一方で、主催者であるCTA(Consumer Technology Association)としてのメッセージを強く感じました。
アメリカは、製造業が非常に弱く半分捨てたような状況になっています。そのような状況の中で、残っているのはクルマ業界です。アメリカでの生活には、クルマが必需品ということもあり、GMが今一度、製造業として、アメリカの未来を背負うという文脈を個人的には、感じました。

GMは、事故ゼロ、排出量ゼロ、渋滞ゼロをビジョンに掲げており、ビジョンの達成に向けて、取り組み内容を定め推進しています。
バッテリープラットフォーム「ultium」
さらに、GMは、カーボンニュートラルを2040年で達成するとの目標を掲げています。
2035年までに、再生エネルギーの利用やEV化を全車種に適応するとし、気候変動への投資も行うといった話をしていました。EVが正しいクルマの原動力なのかについては、5年経つと状況は変わる可能性があるため、現状ではこういう表現をするのが正解だと思いました。
また、EV化に向けてGMは、バッテリープラットフォーム「ultium」を発表しました。
「ultium」は、排気量の違いなどの要因からクルマに使用されるパーツのサイズを統一するシステムです。本来、排気量の違いや使用するガゾリンなどの油種によって、パーツのサイズやクルマ自体の機工も違います。「ultium」の発表を受け、クルマをスマートフォンやPCと同様の組み立て型で作れるように、クルマ業界として革新しようというメッセージも込められているなと感じました。

他にも、GMの発表では、「シボレーシルバラードEV」という大型車両が登場しました。
GMは、シボレーシルバラードEVをトラックと呼んでおり、640馬力のパワーがあり、13tまでの牽引を行えます。GMは、EV車でもガソリンに引けを取らないパワーがあるという主張をしたいのだと思います。
昨年GMは、物流用のEV化を図る製品として、「電動パレット」とEVトラックの「EV600」を発表していました。
「電動パレット」は、「EV600」に積載することができ、ラストワンマイル用の貨物用カートのような使い方が予定されていました。今年は、一歩進んで、ウォルマートやフェデックスにおいて、「電動パレット」と「EV600」の実用化が進み始めていると発表しております。
GMは当初、『ultium』を活用した鉄道のEV化を検討していたが、水素電池を活用した方がより高い出力を期待できるとし、鉄道の他、航空機、重機などにも水素燃料電池(Hydrotec)の活用を進めているとも話しておりました。
GMの他にTOYOTAも水素電池の取り組みを進めており、私は、水素電池やEVなどが、今後のクルマ業界にどういう影響を及ぼしていくのかについて関心を高めてます。
自動運転機能「ウルトラクルーズ」
吉田:今回GMは、自動運転の技術について、一般道をハンズフリーで走れる自動運転機能「ウルトラクルーズ」をクアルコムと共に開発したと発表しています。
GMは、「ウルトラクルーズ」を「アプリケーション」として、提供できるようにしていると話しており、クルマに対して、「ultifi」というOSのようなものを搭載し、その上で「ウルトラクルーズ」を搭載すると説明しています。

GMは今後、クアルコムと共に「ウルトラクルーズ」を実現するためのユニットなどをノートパソコン2台分のサイズのコンピュータで提供していくと述べてました。
GMは、「自動車メーカーからプラットフォームイノベーターに変わる」という目標を掲げており、EVプラットフォームやソフトウェアプラットフォームをベースにビジネスにしていくとも発表しました。
こういった、エコシステム自体を変えていこうとしているという意思表示をしたということが、去年との違いとして感じたことです。
「ウルトラクルーズ」は、クアルコムとGMとの共同開発ということですが、クアルコムについての記事を書かれている小泉さんの意見を伺いたいです。

小泉:クアルコムは、センサーやチップの開発をメインで考えている企業なので、基本的にクルマそのものを作ろうという考え方をしていないと思います。
クアルコムが作っているチップセット「Snapdragon」をクルマ用に対応させていくという動きがあります。「Snapdragon」は、クルマの頭脳になるわけですからダッシュボードなどに搭載しているモニターに対して、あらゆる情報をデジタルで表示する「cockpit platform」を作成していています。
その他、天井にディスプレイを設置する動きがあります。クルマを単純にコントロールするというだけのコンピューティングではなく、クルマを動かすとそれに付随する様々なことが起きます。そこで、クアルコムは、クルマの利用に関わるすべての事に対し、デジタル技術を駆使して、サービス化していく、そのようなチップセットを作ろうという考え方をしています。
技術の進歩も激しく、自動運転が始まった頃は、大きいサイズのコンピューターをトランクルームに置いていたのですが、近年では、コンピューターのサイズが小さくなっています。
吉田:スマートフォン市場では、クアルコムが、トップのテクノロジーサプライヤーであることに間違いないので、クルマ業界でもクアルコムが重要な立ち位置であると感じました。
小泉:しかし、携帯電話の市場も頭打ちになりつつあり、これ以上の進展は難しいから、「次はクルマだ」という発想があると思います。一方で、競合のAMDは、PlayStationやXboxなどのゲーム機に対するチップを提供しており、ここは数年先まで工場を動かしっぱなしでも、供給が間に合わないという状態になっています。
クアルコムも発表では、クルマをメインに押し出していますが、実は、地に足がついたところだとアームベースのチップセットをPC向けに提供しています。ノートパソコンは、もはや、持ち運ぶのが当たり前だと考えた時に、高速通信ありきのPCがないといけません。
一方で、クルマ業界に関しては、これから取り組んでいく領域だと思いますので、将来に向けて狙う領域だと考えていると思いました。
吉田:クアルコムは、スマートフォンなどに搭載するCPUを提供していますが、その強みとして、消費電力の少なさが挙げられます。一方で、省電力化を苦手としているのがインテルやNVIDIA、AMDです。
彼らは画像処理が得意で、特にNVIDIAは自動運転を映像認識技術を応用することで、一歩リードしているように見えていました。しかし、コネクテッドカーに注目が集まることで、クアルコムが一歩リードした感じがします。
小泉:そうですね。NVIDIAは、ゲームとクルマを事業の中心に位置付けており、元々GeForceという画像処理チップメーカーとしてのブランドを保有していることもあります。
その後、NVIDIAのグラフィックボードにおける処理技術が、AIで使用するような基礎技術に使えると言うことで、一気にAIの企業として、世の中で認識されたという経緯があります。
また、NVIDIAのコンピューターグラフィックス処理の延長上にあるのがゲームです。
今回発表された、サムスンが販売している新型のテレビには、NVIDIAのグラフィックボードが内蔵されており、テレビでオンラインPCゲームができるくらいのスペックを有しております。
NVIDIAは、テレビをディスプレイとしてオンラインゲームを楽しみたいという方に、マーケットを見出していると感じます。
世界のトレンドとして、クルマに注目が集まりがちですが、実際にクルマ業界を見ると、コネックテッドカーやEVなどの普及には、まだ時間がかかると思っております。一般的には、ガソリン車がまだ市場としては大きく、これらの分野は今後伸びる分野なのです。
サステナビリティを訴えるサムスン

吉田:今年、プレショー・キーノートに登壇したサムスンは、サスティナビリティや環境保全への取り組みが発表されました。
サムスンは、省エネルギーや環境保護の観点から、待機電力を削減した省電力や環境保護についての目標を話題にしています。
リモコンなどは、ほとんど電力を使わないので、乾電池を無くし、ソーラーパネルを搭載したリモコンを発表していました。また、テレビやスマートフォンの充電器について、待機電力を削減していきたいと述べていました。
また、サムスンは、「SmartThings」をよりオープンにしていくために、いろんな企業と繋がりたいと発表、「Matter」との連携が決まったと報告しています。
その他、Home Connectivity Allianceに加入したと発表しており、家電業界でも大きな話題となっていました。このことで、こういった取り組みを通して、本当にスマートホームのデータ連携規格が統一できるのではないかと感じました。
サムスンとパナソニックの対比

また、サムスンは、パタゴニアとの連携に関して、洗濯中に発生するマイクロプラスティックを下水に流さないことで、環境貢献する取り組みを行うと発表しました。
講演中にも「プロダクトライフサイクル」を考え直しましょうという話をしており、ユーザーがプロダクトを使っている間の電力消費や、環境汚染などを問題視し、ユーザーが使いながら環境改善に貢献していくことが重要だとしています。
一方、パナソニックも似たようなことを話しており、「GREEN IMPACT」を取り組みのコンセプトに掲げており、カーボンニュートラルを2030年までに実現すると発表していました。
サムスンは、コンシューマー向け家電の製作に力を入れており、家電業界のリーダーとして、業界を牽引しユーザーが使っている間の快適な環境を構築するデバイスを出していくとし、そのために各家電メーカーと連携し、ユーザーが実際に家電を使用している間も各家電と連携し、家事などの効率化を進めていくべきだと述べていました。
一方、パナソニックは、CESだとインフラに関するテクノロジーについて発表する傾向が強く出ており、サムスンとパナソニックで両極端なメッセージとなっておりました。
パナソニックが、これからさらに存在感を出していくためには、市場・領域規定ができるといいなと思いました。
スマート家電、メーカーの壁を越えた標準化
吉田:スマート家電における、メーカーの壁を越えたデータ通信の標準化が、「Matter(マター)」の登場により整うと言われており、2022年から順次、対応したデバイスが発売されていくと言われています。Matterは、開発者が安全で信頼性の高いソリューションを簡単に作成できるようにするIoT基盤であり、自社製品を主要なすアートホームエコシステムと相互運用を可能とするものです。
すでに、AmazonやApple、Google、SmartThingsも対応していて、多くのメーカー等の企業が参画しています。
この、スマート標準規格「Matter」の登場で、スマートホームや家電コネクトが今後どうなっていくのかについて、小泉さんはどう思いますか?
小泉:規格の話題は、遡ること6年前、「ZigBee」や「Z-WAVE」などさまざまな通信規格が林立していて、その統合が話題になっておりました。
その後、2017年にAIブームが到来し、「Alexa」が注目を浴びました。
「Alexa」が登場するまでは、大手家電メーカーは、「自分達の周りにアライアンスパートナーを集める」という発想が主流でした。「Amazon Echo」が登場し、「Alexa」がトレンドになり、Alexaバンドルの家電が一気に市場へ登場し、その後、デバイス同士を繋ぐプロトコルは、何でも良いのではないかという流れになってきたのだと思います。
そして、家電業界の人たちは、何かと何かをつなぐための通信プロトコルの話をしている場合ではないと気づき、あらゆるメーカーが作っている製品を超えて接続する必要があると考えるようになりました。「Matter」の登場により、これまで続いた家電メーカー同士の覇権争いも収束していくと感じました。
家中の家電を全て同じメーカーで揃えている人は、少ないと思います。バラバラのメーカーが作った家電製品を繋ごうと考えた時に、「Matter」などの規格を統一する発想は、当然に必要だと思います。規格が統一されていない場合、例えば、HEMSなど、ホームコントローラーをハブとした取り組みは、難しくなります。そのため、規格を統一する取り組みは、素晴らしい動きだと思いました。

吉田:そうですね、半導体の影響を受けたのか、matter対応デバイスは、予定より製品の作成が遅れているというような話も出ていたりしますが、今後が楽しみな分野です。
CES2022では、サステナビリティや環境をテーマにした発表をする企業が多く感じました。しかし、ユーザーが快適に過ごせるというところが本質的な価値としてあり、加えて環境貢献が付随してこないといけない状況になっていると感じました。
小泉:本日はありがとうございました。
[/wpmem_logged_in]