Yahoo!とLINEが統合するというニュースが出て以来、ネットやテレビのニュースはこの話題で持ちきりだ。
そもそも合併の背景として比較されているスライドを見るに、比較対象は米国や中国企業であり、そこに対抗していかなければ、やがて海外企業が国内を侵食してくる可能性すらあるという点がポイントとなる。
しかし、多くのメディアはPayPayとLine Payの統合がどうなるのか、など国内のキャッシュレス決済シェアの話題となっているケースが多い。朝のワイドショーでも「我々の生活はどうかわるのですか?」という質問に対して「生活者としては、決済サービスを選ばなくてよくなるくらい」といったコメントがされていたのを見た。
しかし、特に中国における、アリババ(大手EC企業)や、テンセント(WeChatの運営企業)のグループを追いかけてきた筆者からすると、今回の統合によって「OMO(Offline merges with online)」の世界が実現される日が近くなったのではないか、それは生活者にも大いに関係があることだ、という点に注目がいく。
OMOとアリババなど中国企業の取り組み
OMOとは、オンラインとオフラインの世界が融合した世界のことで、利用者はオンラインサービスであろうが、オフラインサービスであろうが、その時の気分に従って好きに利用できる環境になっていくということだ。
例えば、道を歩いていて、のどが乾いたらコンビニに入って水を買うということになるが、この時わざわざECサイトで買う人はいない。
一方で、残業していて夕食の買い物をする時間がなくなった人が、帰宅途中にECサイトから注文すると、帰宅して少し経つとスーパーの配達員が買い物袋をさげて訪問してくれると便利だ。
OMOが実現される世界では、生活者はオフライン・サービス、オンライン・サービスという区別をすることなく、好きな方を好きな局面で選べるようになる。
こういった、生活者のわがままに応えるには、それ相応のインフラが必要になるわけだが、以前のレポートでも報じた通り、アリババはすでに中国国内で「フーマー」と呼ばれる、こういったスーパーマーケットを実現している。

この、オンラインとオフラインを自由に行き来する体験が可能となる未来が注目を集めだしてからというものの、世界中の小売流通関係者が中国を訪れている。
そして、上海でナイキがOMOの世界を実現したショップを作り、現在ニューヨークの5番街でも展開しているというから、中国の動きは世界を動かしているともいえる。
こんなダイナミックな動きを支えているのが、「スーパーアプリ」と呼ばれるものだ。
Yahoo!とLINEの統合の先にある生活環境の変化
LINEのようなチャットツールや電子決済を中心に、シェアバイク、シェアカー、EC、スーパーマーケット、フリーマーケット、保険、などなど、生活のありとあらゆる接点を持つためのサービスがアリババグループやテンセントグループでは提供されていて、生活者一人との接点を持っている。
そして、生活者一人に対する行動履歴データが、次のサービス開発に活用されるのだ。
前述したアリババグループのスーパーマーケットである、フーマーの出店場所について、IoTNEWSの取材の際、「出店場所は、すべてビッグデータから割り出しているので外すことはない」と言い切っていた。
よく、「データを中心にした経営」といわれるが、まさにこれを体現しているといえる。
つまり、Yahoo!、LINE連合がこれらの企業に肩を並べるには、すべての行動データを取得し、オンライン上だけでなくオフラインも巻き込んだ生活者サービスを実現し、行動を蓄積・活用する必要があるのだ。
Yahoo!とLINEもオンライン上での存在感は大きい。「スーパーアプリ」と呼ばれる多様なサービスも作れる。しかし、オフラインに進出したキャッシュレス決済については、まだまだ割合は低い。
ここの行動変容がどう起こせるかが、オフラインサービスにおける起点となることは言うまでもない。
つまり、今後、シェアバイクやシェアカーなど、様々な「オフライン」サービスでの存在感を増すために、PayPayやLinePayなどを使ってキャッシュレス決済をしたら他の決済手段よりもお得になる、より良いサービスが受けられる、という環境を構築することが第一歩となる。そのために、スーパーアプリを充実させ、オフラインの事業者との連携を強化してくことになるだろう。
こう考えていくと、次は、潤沢な資金を背景として、利用者の多い大手小売り業あたりを買収のターゲットにするのかもしれない。