今年もラスベガスでCES2020が開催されている。
CESの展示に対する期待値として、新しいテクノロジーが我々の生活を変えていくということがある。その一方で、数年前からのレポートでも報じているように、単純にブレイクスルーとなるようなコトは簡単には生まれてきていない。
思いついたコンセプトは、すぐコンセプト動画にされ、資本が集まることからどんどんプロトタイプがリリースされる一方で、きちんと製品化し、市場に受け入れられるところまでいける製品は極めて少ない。
その結果、実際に製品が登場した頃には近視感を感じ、「WOW!」と叫ぶことができなくなるのだ。
今年の傾向はどうだろうか。
基調講演で登場したサムスンにせよ、デルタにせよ、その他多くの企業ステージで、いずれも「人」に注目した発言が見受けられた。
そして、大小様々な企業が作ったアイデアや部品の数々を、大手メーカーが中心となって、人が快適に過ごすために必要なモジュールとして取り込んでいるところが特徴的だと言える。
これまで、数年にわたって繰り広げられたアイデアの創発結果が、洗練され、完成品メーカーによって完成度高くリリースされ出している。
何個売れるかわからないからと新製品を出し渋っていた企業や、自社の強みが活きないアクセラレーションプログラムに勤しむ、迷走する日本企業が多い中、サービス事業者は、自社のサービスを高めるためにデジタルを活用し、テクノロジー企業は、自社のテクノロジーを受け入れられるために人に寄り添ってきた。
また、クルマ産業で次々と新しいメーカーが登場しているように、技術革新がこれまでの製造業の常識を覆すシーンが増える中、新たな挑戦を行う企業も登場してきている。

5Gが始まってようやくデジタルツインは構成される
IoTというと、現実世界をデジタル空間上にコピーするという考え方が重要なのだが、現実問題、現状の通信環境では、基本的な通信は非同期通信とならざるを得ない。つまり、ある断面をコピーすることは可能でも、リアルタイムな動きまでコピーすることはできないのだ。
1時間に一回の通信でよいこと、1分に1回の通信でよいこと、1秒間に1回の通信でよいこと、ほぼ同時に通信できなければいけないこと、と要件によって必要な通信間隔は異なる。
しかし、本気で現実世界をコピーしようとしたら、5Gくらいの高速・大容量・同時多接続があたりまえに担保される社会にならないと、社会の動きをデジタル上にコピーし、シミュレーションすることは難しい。
2019年は、「エッジインテリジェンス」という言葉に代表されるように、エッジ側の処理向上が注目されていた。
そして、2020年のCESでは、予想通り様々な家電製品やデバイスが、インテリジェントになって登場している。デバイスのインテリジェント化は、身の回りのデバイスのロボット化を意味していて、それらが複合的に動作することが当たり前になってきているように感じる。

人の必要なタイミングをセンサーが見出し、必要な役割を果たすデバイスを動かして、役立てる。
今回の展示からは、今後、IoTやAI(というかインテリジェントな処理)を前提として、ロボティクスが我々の暮らしを豊かにするようになっていく生活が見えてくる。
人に寄り添うテクノロジーに注目
今回のCESを通して、これから様々な企業の展示などを紹介していくが、一つの考え方としては「テクノロジーが、人といかに寄り添うか」に注目していきたいと思う。
というのも、B2Bの世界では自動車産業など産業規模の大きなマーケットに関する製品が注目されがちだが、例え自動運転の技術が研ぎ澄まされたとしても、環境や法律の整備をなくして実現することは難しい。
トヨタが今回発表したスマートシティ構想に関しても、単に自動運転カーが走る街がないから自ら作ってみる、ということでなく、そういう移動が実現された時、ヒトはどう感じ、そこに未来を描けるのかを主題としているように感じる。

最近、こういった先進的な企業の「問い」を見るにつけ、我々は単にテクノロジーの進化に注視し、そのトレンドを追いかけているだけではダメなのではないかと感じることが多い。
家電製品は自動化が進み、クルマは安全性能が高まり、スマートフォンはコミュニケーションの形を変え、AIをはじめとしたインテリジェントな技術がこれまで判別できなかった曖昧なことを判別できるようになる中、様々な要素技術がそれぞれの速度で発展し、様々なユースケースの中で研ぎ澄まされ、合わさり、生活を豊かにしてきてくれた。
windows95とインターネットが登場して以来、テクノロジーの進化が牽引することで大きく変わってきた、この10年の我々の生活。2020年から始まる次の10年は、「その進化と発展の恩恵は人といかに寄り添うのか」という新たな「問い」が突きつけられている。