オムロンとスクウェア・エニックスが共同研究を開始、センサー技術とゲームAIで人間の内面にせまる

人のモチベーションを高める、「メタAI」技術とは?

デジタルゲームに使われるAI技術には、その独自の歴史がある。1970年代に登場したデジタルゲームにAIの技術が導入されたのは、1995年頃だ。それ以降、それまで2次元の画面上の「あやつり人形」にすぎなかったキャラクターが、AIによって自律的に動くようになった。

キャラクターの自律的な動作に使われるAIは「自律型AI」(キャラクターAI)と呼ばれる。他には、地形を解析したり、目的地までの道筋を計算したりする「ナビゲーションAI」、プレイ中ではなくゲーム開発に用いるAIなどがある。

そうしたAI技術を結集した代表的なゲームが、2016年にスクウェア・エニックスから発売された『FINAL FANTASY XV(ファイナルファンタジー15)』である。『FINAL FANTASY XV』に登場するキャラクターたちには、「自律型AI」がうめこまれている。彼らは3次元のシミュレーション空間の中で、自ら人や物体を認識している(センサー機能がついている)。たとえば、ゲームの戦闘中にプレイヤーが動かす主人公がピンチに直面しているのを見て、助けに行くこともできる。

しかし、あくまでゲームであるため、キャラクターが勝手に動いては困る。彼らは「役者」として、プレイヤーが退屈しないようにふるまわないといけない。そこで、「映画監督」の役割として使われるAIの技術が、「メタAI」である。

オムロンとスクウェア・エニックスが共同研究を開始、センサー技術とゲームAIで人の内面にせまる
メタAIのカギを握る、「2次元感情マップ」(画像提供:スクウェア・エニックス)

「メタAI」は、プレイヤーのプレイデータをもとに、「感情マップ」を構築する。たとえば、プレイデータからは、プレイヤーが「勝てると思っているか」、「不安に思っているか」といった感情がわかる。それをもとに、プレイヤーが退屈しないような(モチベーションを維持できるような)状態に近づけるべく、キャラクターやゲーム世界を動かしていくのだ。

このメタAIの技術を、実世界に展開することが、今回の共同研究の試みとなる。ゲームAI開発の第一人者であるスクエニの三宅陽一郎氏は、今回の共同研究に意義について、「これまでゲーム業界は、デジタル空間だけでAIの技術を開発してきた。しかし、オムロンの技術を使って現実空間でデータをとることができれば、本来の人間の複雑な内面などにせまれる。現実世界という厳しい環境で、メタAIの技術を育むことができる」と述べた。

また、「最近は、デジタル世界と現実世界の境界があいまいになってきている。そんな中、デジタルゲームは画面の外に出て、スマートシティなどの現実世界をベースとした領域に展開しようとする流れがある」とも述べた。

オムロンとスクウェア・エニックスが共同研究を開始、センサー技術とゲームAIで人の内面にせまる
共同開発するメタAIでは、人の性格なども考慮したフィードバックを行う(画像提供:オムロン)

この技術は、卓球ロボット「フォルフェウス第6世代」を通じて開発される。第5世代までの「フォルフェウス」は、人の動きをとらえるモーションセンサーや、ラケットに搭載したマーカーによって、「人の動き」はとらえていた。第6世代では、人の様々なバイタルデータを収集し、「感情」の変化をとらえる。

「フォルフェウス第6世代」に使われる技術の詳細は、来年の1月にラスベガスで開催される世界最大のテクノロジー見本市「CES2020」で発表される予定だ。

また、この技術は、オムロンが注力するFAやヘルスケアの分野にも展開していく予定だとした。たとえば、FAの分野では、工場の作業者の習熟度に合わせ、当人がモチベーションを維持しながら作業を習得できるようなしくみを目指す。

最後に、オムロンの八瀬氏は、「フォルフェウスのプロジェクトを通して、人と機械が融和する姿を世に示し、共感してもらうことで、仲間を集めていきたい」と述べた。