2019年9月17日〜18日IoT World Conferenceが都内にて開催された。
今回はその中のデータサイエンティスト協会 代表理事/ブレインパッド 代表取締役社長 草野 隆史氏による「データサイエンティストの視点から見たIoT×AIの可能性と課題」と題した講演について紹介したい。
日米のITの用途の違いから生まれたデータサイエンティストの役割の違い
まず草野氏はデータサイエンティスト協会を設立した理由について述べた。
アメリカで2010年頃ビッグデータとデータサイエンティストという言葉が使われだし、ビッグデータを使うのがデータサイエンティストだというニュアンスだったが、その言葉の意味や定義は曖昧であったという。
そもそもデータやITの位置付けがアメリカと日本では違う。
まず日本におけるITの役割とは、「業務効率」や「コスト削減」といった守りの用途で使われている。
一方アメリカではITを活用して「ビジネスモデルの変革」「サービスの開発・強化」「顧客行動・市場の分析」と、攻めの用途で使われている。

また、アメリカでは全ITエンジニアの7割以上が事業会社の中にいる。攻めのためにITを使うのであれば、ノウハウの流出リスク、コスト・時間の増加を避けるため、外注ではなく内政傾向になる。
しかし日本では半数以上の企業が情報システム部門長が役員ではなく、ITは外注して構築するものだという認識だという。守りのためのITであれば、類似の仕事を数多くこなしているベンダーに発注した方が失敗のリスクが少ない。

そのためITにかけられる費用というものが、攻めの投資であるアメリカとコストを削減するための投資である日本では明らかに違っており、日本のデータサイエンティストの収入はアメリカと比べて倍近く低い。
そのため日本では職業として人気が出ず、優秀でやる気のある人材が入ってこないのが現状だという。
ビッグデータの取り扱いについても日本は情報収拾で止まっており、次のステップに結びついておらず、他国との差がついてしまっている。
アメリカではビッグデータという言葉が使われ出す前から企業の中にはビジネスとIT両方わかる人材が一定数おり、そこに新しいビッグデータというリソースがやってきた。しかしこのリソースを活用するための知識、スキルが足らないので、そこを補える人材をデータサイエンティストと呼んだ、という流れだ。
対して日本は企業の中にビジネスとIT両方わかっている人材がいない状況の中、ビッグデータというブームが来てしまった。
結果として日本はビジネス、ITを理解し、そこからさらにビッグデータを活用して知見を出すという高いハードルに迅速に対応しなければならない状況になっている。
このような状況の中、企業の状況によってもデータサイエンティストの位置付けが違う中で、データサイエンティストという言葉が一人歩きしてしまうのは非常に危険な状態であり、定義づけをしなければならないという結論からデータサイエンティスト協会を発足したのだという。
データサイエンティストのミッションとしては、データサイエンス力、エンジニアリング力、ビジネス力を兼ね備えていることだと話す。
そもそもなんの問題を解けば良いのかを考え、実際に分析するためにはデータサイエンティストの視点が必要であり、大量のデータを解析するにはエンジニアリング力が必要だ。そして分析した結果を生かすためにはビジネスサイドの人間とコミュニケーションする力が必要なのだという。
IoTが意味すること
次にインターネットがもたらした変化について語られた。
インターネットがなかった時代では、限られたデータしかなく、限られたアクションしか起こせなかった。
例えば小売業を例に挙げると、スーパーでの購買行動分析などはできず、分かるのは購買された結果だけだ。売れた商品はなんなのかといった限定的なデータを元に分析を行なっていた。誰が買ったかも分からず、分かったとしてもDMを送る程度のことしかできなかった。
それがインターネットが普及し、サイトで購買できるようになったことで、横断的に全ユーザーの構造データが取れるようになった。
このデータを分析し、次に繋げようとする会社と放置する会社とで大きく差が出てくると草野氏は語る。
初期の代表例がアマゾンである。データを分析し、サービスや効率化の改善を行い、レコメンデーションエンジンを開始した。これによりユーザーがついで買いをするようになった。この機能によって顧客は便利だと感じ、客単価も上がるので好循環が生まれる。
このように、一部の限られたデータではあるが、リアルタイムにユーザーの行動がデータの世界に写像されるようになった。良いサービスを提供し、多くの人が利用すれば多くのデータが集まり、そのデータを分析してさらに良いサービスを提供するという好循環を生み出すプラットフォーマーたちが現れた。
そしてインターネットがモバイル化することによって人間のリアルタイムなデータがデータの世界に写像されるようになり、さらにIoTの時代の到来により常時データを取れるようになる状況がやってくる。

人の行動やモノや環境といった、限りなくリアルに近いデータがデータの世界に写像されるということは、ネットの中だけで好循環を生み出していたプラットフォーマーたちだけでなく、あらゆるビジネスで適応可能である時代がやってくるのだという。
7Sistersと呼ばれる企業(Apple、Google、Microsoft、Amazon、Facebook、騰訊、アリババ)はITとビジネスが限りなくイコールに近く重なり合っているビジネスモデルであり、ネットで顧客、データ、資金を獲得し、リアルな世界でも力を持ち世界に進出してきた。
それがIoT時代の到来によりあらゆる産業が革新の対象になり、データ分析を通じた革新のためにAIやIoTの対応を加速させているのだという。
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